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コ-トジボワール:公平な裁きになるか 試されるワタラ大統領

両陣営による重大犯罪に迅速な対応を

(パリ)-アラサン・ワタラ大統領率いる新政権は、選挙後の武力衝突で犯罪を犯したワタラ大統領側部隊を訴追し、公平な裁判を行なうという公約を実行しなければならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。今は、ローラン・バグボ前大統領の政権下で強化されたコートジボワール内の政治的民族的分裂を過去のものとするまたとない機会である。しかし、不平等な裁きは新たな分裂の火種となる恐れがある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

報告書「容赦ない殺人:コ-トジボワール選挙後の衝突における犯罪を裁く必要性について」(全129ページ)は、バグボ派とワタラ派双方の部隊が引き起こした、戦争犯罪及び人道に対する罪に該当する可能性のある犯罪について詳述した調査報告書。バグボ氏が選挙に敗北しつつも、権力の移譲を拒否していた2010年11月から2011年6月までの期間に起きた恐ろしい人権侵害の数々を調査して取りまとめている。ワタラ氏は2011年4月に権力の座に就いた。この衝突の間に、少なくとも3千人が殺害され、150人の女性がレイプされた。それらの犯罪の多くで、加害者は、政治的立場・民族・宗教を基に暴力の対象を選別した。報告書は、文民検察局や軍事検察局が元バグボ派の少なくとも118人を刑事訴追するなど、ワタラ政権によるアカウンタビリティ(法的責任追及)の取り組みも報告している。

「バグボ氏自身を含む前政権の指導者の訴追に向け、ワタラ政権が前進していることは注目に値する。確かに、そのバグボ氏が重大犯罪を行ったとする確たる証拠がある。しかし、法の裁きは、愛する者を殺され、家を焼かれるのを見た両陣営の被害者にとって不可欠なものであり、勝者だけの道具ではない」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長ダニエル・ベケレは語る。

本報告書は、2011年1月から7月までの間にヒューマン・ライツ・ウォッチが行なった6回の現地調査ミッションに基づいて作成された。同調査ミッションで、首都アビジャンに4回、コ-トジボワールとリベリア国境沿い地域を2回訪れた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員が聞き取りを行なった人びとは500人以上に上る。その対象は、暴力の被害者や目撃者、そして紛争両陣営の兵士、ワタラ政権当局者、ジャーナリスト、医療専門家、人権及び人道団体関係者、国連職員、在アビジャン・ニューヨーク・ワシントン・パリの外交官などである。

本報告書は、特定の事件に関与した犯人・被害者・目撃者などから入手した独立した複数の情報を使いヒューマン・ライツ・ウォッチが検証した情報を基に、重大犯罪に関与した軍及び政治指導者13人を特定している。うち、バグボ派で重要犯罪に関与した指導者は8人。その中には、バグボ前大統領自身の他、長期にわたり民兵指導者だったシャルル・ブレ・グデ、軍の前指導者のフィリップ・マンウ、2つの特殊部隊の前リーダーだったギアイ・ビ・ポインとドグボ・ブレの名前が挙げられている。ワタラ派で重要犯罪に関与した指導者は4人で、共和国防衛隊のエッディ・メディとオスマン・クーリバリーなどが含まれている。この2人のワタラ派指揮官については、2002年から2003年までの紛争の際にも、同様の重大犯罪に関与したことを示す信頼に足る証拠が存在していることを本報告書で示している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2010年11月の衝突開始から2011年5月の戦闘終結までの今回の衝突の状況を取りまとめている。独立選挙管理委員会と国際監視団が2010年11月28日の大統領選挙の決選投票の勝者をワタラ氏と公表したにもかかわらず、バグボ氏が退任を拒否。バグボ氏率いる治安部隊及びそれと手を組む民兵組織は、ワタラ派支持者に対する暴力作戦を開始した。3月には紛争が勃発し、その後、両陣営が国際人道法への重大な違反行為に手を染めたのである。

12月に入ると、バグボ氏と密接な関係にある精鋭治安部隊は、ワタラ派支持連合体に属する政治指導者を、レストランや自宅から引きずり出し、待っている車に押し込んで連れ去った。家族は、後に遺体安置所で、銃弾でハチの巣にされた遺体と対面することになった。有権者の動員に活動的だった女性たちや、ただ単に親ワタラのTシャツを着ていただけの女性などが、バグボ氏支配下の武装軍や民兵組織に標的にされ、多くの場合輪姦された。襲撃者はその後、女性たちに「アラサンの所に行ってお前らに起きた事を伝えろ」と言っている。親バグボ派民兵は、検問所でワタラ支持者とみえた人びと数百人を引き留め、ブロックで殴り殺し、至近距離からの銃撃で処刑、あるいは生きたまま焼き殺した。

バグボ氏に辞任を求める国際的圧力が増大しても、暴力は一層凄惨になるだけであった。バグボ政権が支配する国営テレビ局Radiodiffusion Télévision Ivoirienne (RTI)は親ワタラ勢力への暴力を煽り、路上に障害物を設置するよう、そして「外国人を激しく非難するよう」バグボ支持者に強く勧めた。バグボ前大統領は10年にわたり民族問題と国籍問題を自らに都合よく解釈し続けたが、この「外国人を非難せよ」という呼びかけはその典型といえる。バグボ政権下での民族性と国籍基準の操作の結果、北部コ-トジボワール人は2級市民として扱われたほか、西アフリカ諸国からの移民は招かれざる侵入者として疎まれた。首都アビジャンと同国最西端で、2月から4月の間に、北部コートジボワール人及び西アフリカからの出稼ぎ労働者たちが数百人殺害された。その判断基準は、名前や衣服だけを根拠とすることも多々あった。イスラム教徒共同体内のモスクや宗教指導者たちも同じように標的にされた。

ワタラ派が軍事攻勢を始めるまでの間は、親ワタラ派部隊による人権侵害は比較の対象にならない程に少なかった。しかし、軍事攻勢の開始以降、同国最西端の村という村で、特にトゥレプルーとギグロの間で、ワタラ派の共和国防衛隊は、親バグボ派部族勢力に属する民間人を、避難できないような高齢者も含め殺害、女性をレイプ、村々を焼き打ちにしている。ドュエクーエで、共和国防衛隊およびそれと手を組む民兵が、数百人の人びとを虐殺している。親バグボ派民兵と決めつけられた丸腰の男性たちは、自宅から引きずり出され処刑された。後にアビジャン制圧の軍事作戦の際には、共和国防衛隊はバグボ氏派の民族に属する男性多数を(時に拘束下で)処刑した他、人びとを拷問した。

ワタラ政権は、共和国防衛隊は「悪事」を働いたものの、バグボ派部隊の比ではない、と主張。ワタラ政権に近い外国人外交官の中にもそのように言う向きもある。民族問題を操作して憎悪をあおり、暴力をエスカレートさせたのはバクボ氏だ、と言うのである。しかし、人権基準や国際人道法は、紛争の原因が誰かに関わりなく、全ての犯罪を起訴するよう義務付けている、とヒューマン・ライツ・ウオッチは指摘。バグボ派部隊が北部コ-トジボワール人や西アフリカ諸国からの移民を殺害したのと同じように、ワタラ派の部隊がバグボ派の家族を殺害・レイプし、村を焼き打ちした。双方の民間人が被った被害は決して合法ではない。

「コートジボワールの援助国や援助機関は、ワタラ政権の国家再建を援助しようと行動している。これは正しい。しかし、コ-トジボワールを、かつてのように平和で豊かな西アフリカの中心地にしたいのであれば、両陣営の犯罪に対して法の裁きが下されるよう-そしてそれがはっきりと目に見えるよう-友好国は確保する必要がある」と前出のアフリカ局長ベケレは語る。

ワタラ政権の要請に基づき国連人権理事会が設置した国際事実調査委員会の7月報告書には、重大犯罪に関与した可能性があるとして捜査対象とされるべき個人を特定した書類が添付されている。しかし、その添付書類は国際刑事裁判所(ICC)検察官と国連人権高等弁務官事務所には提供されるものの、コ-トジボワール政府は入手できないようになっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチには伝えられている。

被害者たちが、法の裁きを享受することができるよう、国連人権高等弁務官事務所は、その添付書類をワタラ大統領や司法大臣、そしてアビジャン及びダロアの検察官などのコ-トジボワール政府当局に直ちに提供すべきである。

コ-トジボワールの文民検察官及び軍検察官は、バグボ派に対する刑事手続きを進め、これまでに118人を起訴している。しかし、今回のコ-トジボワール危機での最悪の事件の1つ、ドュエクーエ虐殺が起きて6ヶ月経過したにもかかわらず、共和国防衛隊は誰一人として、選挙後衝突での犯罪容疑で起訴されていない。虐殺によって愛する者を失った人びとの多くは、自宅に帰るのが怖く、町郊外の人道キャンプに留まっているのが現状だ。

9月27日、デズモンド・ツツ大司教は、高名な政治家や道徳的なリーダーの国際的グループであるエルダーズを代表して、「ワタラ大統領が始めた司法手続きが公正でありかつ完全に平等であることを、国民と世界に示すよう促し・・・『勝利者の裁き』だと人びとに思われれば和解プロセスが大きく損なわれると私たちは確信しています」と述べている。

「ワタラ大統領は、重大犯罪を行ったワタラ派の人びとも信頼に足る手続きでもって起訴するべきだ。そして、不処罰に終止符をうつという自らの公約を実行に移さなければならない。治安部隊が法律を越えた存在であり続けた10年のバグボ統治を終わらせ、法の支配の復活と、全コ-トジボワール人にとっての紛争による苦しみからの癒しのプロセスを開始するには、まずは、公平な法の裁きが必要である」と前出のベケレは指摘した。 

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