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Dr. Brittany Brooks meets with a patient at Open Arms Healthcare Center, a clinic in Jackson, MS, that focuses on alleviating healthcare disparities for underserved populations, with a particular focus on LGBT people.  © 2018 Nina Robinson / The Verbatim Agency / Getty Images

(ニューヨーク) — 多くのレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の人びとにとって、保健医療サービスの更なる壁となるような規則変更を米トランプ政権が検討している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。米保健福祉省(HHS)は、LGBTの人びとが差別に対してよりぜい弱になってしまうこのような変更を再考すべきだ。

報告書「『次善の策ではいや』:米国の保健医療における反LGBT的差別」(全34ページ)は、LGBTの人びとがメンタルや身体の保険医療サービスを受けようとする際に直面する壁の一部について調査・検証したもの。LGBTの人びとのうち、地元でのサービスを見つけることができなかったり、医療現場で差別や治療拒否に遭遇したり、不当な扱いを恐れて受診を延期、または先送りしている人も多い。

ヒューマン・ライツ・ウォッチLGBTの権利担当調査員ライアン・ソーレソンは、「うつ病や依存症からがんや慢性病に至るまで、差別の結果、LGBTの人びとはさまざまな健康問題のさらなるリスクにさらされている」と指摘する。「保健福祉省は、こうした格差を公衆衛生問題と捉えて解決に向かうべきなのに、規則を政治化してどんどん悪い方向に進めている。」

予定されている2つの規制変更がこうした問題を悪化させる可能性がある。2018年1月に保健福祉省は、医療関係法における既存の宗教例外を拡大する規則を提案。保険業者や医療従事者に対し、道徳的または宗教的信念を理由に、患者への保健医療サービスを拒否する裁量権を広く付与する内容になっている。2018年4月、トランプ政権は、性自認に基づく保健医療上の差別を、連邦法が禁じていることを明確に示した規制を後退させる計画を発表した。これらの変更が確定すれば、LGBTの人びとを差別から守る数少ない保護制度が、さらに弱体化することになる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは本報告書作成にあたり、保健医療サービス提供者や現場で差別を経験したという個人を含む、81人に聞き取り調査を実施した。

保健医療分野において、LGBTの人びとに対する保護規則の現状はばらばらだ。2016年にオバマ政権は、保健医療における性差別を禁じた医療保険制度改革法の第1557項がトランスジェンダー差別も禁止していることを明確にした規制を発付。8州と宗教団体の運営する保健医療サービス組織らがこれに対して訴えを起こし、トランプ政権もこの規制を後退させる構えを示したのである。

州レベルでの保護制度も不足している。2018年7月現在、37州が性的指向や性自認に基づく医療保険上の差別を明確に禁じていない。ニュージャージー州は性自認に基づく差別は禁じているが、性的指向のそれは禁じていない。10州では、ジェンダー移行関連の保健医療がメディケイドの対象から除外されているため、低所得層のトランスジェンダーの人びとは選択肢が限られてしまっている。

本報告書の聞き取り調査に応えたLGBTの人びとは、ホルモン補充療法やHIV予防・治療のオプション、妊娠および生殖関連の医療、さらには受け入れてくれるプライマリケア(初期診療)さえ探すことが困難な現実ついて詳く訴えた。テネシー州東部に住むトランスジェンダー女性Judith N.は、「ホルモン療法へのアクセスを求めて何年もさまよったけれど、結局見つけられませんでした」と語った。

保健医療サービスの提供者による差別的な扱いについて詳述した人もいる。メンフィスに住むゲイ男性のTrevor L.は、2016年の定期検診でHIV検査を受けたときのことを振り返った。「彼らは座って私に説教し始めました。聖書の話ではなかったんですが、これが適切でないのはわかりますよね、と言うんです。カウンセリングであなたを助けましょうと。それで私はありがとう、でもゲイを公表してからもう20年にもなるのだから私は大丈夫だと思いますよ、と答えました。彼らは私が過ちを犯していると言う権利があるとでも感じているようでした。」

差別だけでなく、性的指向または性自認のために、保健医療サービスをにべもなく拒否されるLGBTの人びとも多い。2017年にアメリカ進歩センターが実施した全国調査では、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル回答者の8%、トランスジェンダー回答者の29%が、性的指向または性自認を理由に、過去1年の間に診察を保険医療サービスの提供者から拒否されたと回答。対象者はカウンセリングやセラピー、不妊治療、そして定期検診などのプライマリーケアを拒否された時の様子を詳述した。あるケースでは、小児科医の宗教的な信念を理由に、同性婚カップルの6歳になる子どもの診察が行われなかったという。

保健医療サービスの提供者もLGBTの人びとも、差別や人権侵害に対する懸念から、LGBTの人びとが受診を先延ばしにしていると指摘した。約2万8,000人のトランスジェンダーを対象とした2015年の調査では、性自認に基づく不当な扱いへの懸念から、調査の前年度に診察を必要としながらそうしなかった人が23%いた。

多くの本報告書調査対象者は、保健医療サービスの提供者が道徳的または宗教的理由でサービスを拒否することを認める法により、受診がさらに困難になるのではないかとの懸念を表した。テネシー州ノックスビルに住むトランスジェンダー活動家のペルセフォネ・ウェッブ氏は、「[それは]凝り固まった意見を持ちがちな人びとに、もっと大胆にもっと大胆にと言っているんです。そして私たちに見えるのは、これがLGBTに対する攻撃であるということです。」

保健福祉省は提案のあった変更を確定すべきでない。差別禁止の保護規則を維持し、患者を危険にさらす広範な宗教例外を撤回すべきだ。各州および連邦議会の議員は、性的指向や性自認を根拠にした保健医療における差別を禁止し、性的指向や性自認のために保健医療サービスの提供者が患者の受診を拒否できる例外を廃止すべきである。

ソーレンソン調査員は、「医療を必要とするLGBTの人びとに対し、医師の無危害原則への誓いはあまりにしばしば決めつけや差別により破られている。」と述べる。「性的指向や性自認にかかわらず、患者が最優先されなければならないということが、明確にされる必要がある。」

 

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