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ミャンマー:平和的な抗議学生への制裁を停止せよ

求められる訴追の取り下げと有罪判決の取り消し

Myanmar leader Aung San Suu Kyi, left, and President Win Myint, wearing face masks to protect against the new coronavirus, leave after a Central Executive Committee meeting at their National League for Democracy (NLD) party headquarters in Naypyitaw, Myanmar Tuesday, July 21, 2020.  © 2020 AP Photo/Aung Shine Oo

(バンコク)―ミャンマー当局は、人権侵害に抗議する学生の逮捕および訴追で政府や軍の批判に応じるのを停止すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。直ちに訴追を取り下げ、刑務所に収監している学生たちを無条件に釈放しなければならない。

全ビルマ学生連盟によると、ラカイン州およびチン州におけるモバイルインターネットの遮断を批判するなど、政府や軍に批判的なデモやステッカー運動に参加したのち、全国で少なくとも20人の学生が様々な国内法の適用で逮捕や訴追されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア地域法律顧問リンダ・ラクディールは、「学生たちが平和的に意見を述べているだけなのに、威嚇や嫌がらせをしているミャンマー政府は落第点に価する」と述べる。「政府を非難することも平和的に抗議することも犯罪とされてはならず、当局もそのように扱うのをやめるべきだ。」

2020年9月10日、学生連盟メンバーが、その前日のインターネット規制に対する抗議活動で逮捕されたラカイン系学生と連帯して「ステッカー」運動を実行。3G・4Gデータサービスをラカイン州とチン州の8つの郡区で復旧させることを求めたチラシとステッカーを配布した。それらスローガンには、「血まみれの政府、殺人軍はいらない」「殺人とファシズムに抵抗し、ラカイン州の人びとと共に立ち上がろう」などがある。

9月12日、警察の特別支部部隊がヤンゴン市北オッカラの学生Paing Min Khant氏宅に夜間踏み込んだ。「警察はドアをノックし、新型コロナウィルス感染症のため、健康診断の一環として近隣で体温検査を実施中だと言いました」と同氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「しかし、なかに入ってくると、平和的なデモ活動および集会法第19条に基づき、[ヤンゴン市の]マヤンゴン郡区とチャウタダ郡区で私たちに対し不服申し立てをしたと伝えてきました。」

警察は同氏ともう1人の学生Wai Yan Phyo Moe氏をマヤンゴン郡区警察署に連行。そこで平和的なデモ活動および集会法に基づき、反戦チラシおよびステッカーをヤンゴン市内で配布するにあたり、警察に事前届けを出さなかったとして起訴される可能性を2人に告げた。

ミャンマーの平和的なデモ活動および集会法は、デモまたは集会の48時間前までに開催の旨を当局に届け出ることが主催者に義務付けられており、違反には最高3カ月の懲役および罰金が科せられる。ステッカーやチラシの配布がこれまで届出が必須の「集会」として扱われたことはなく、当該法の過度に広範な解釈だといえる。

当局はまた、最高で2年の刑および罰金が科せられる刑法第505条(b)に基づき、追加の容疑で訴追という可能性をちらつかせ、Paing Yin Khant氏とWai Yan Phyo Moe氏を威嚇した。

両氏は、チャウタダ郡区警察署に連行されて他の学生の所在を聞かれたあと、やっと真夜中ごろ釈放されたと証言した。警察は即時に両氏を起訴することはなかったが、「未解決」事件の一環として捜査を行っていると言っていたという。

9月18日未明には、少なくとも20人の警察官がサガイン州モンユワ県のNyi Lin Htin氏宅に踏み込んだ。学生連盟によると同氏は当時自宅におらず、警察官は家族に捜査令状を提示しなかった。

警察はステッカー運動の参加者を他3人逮捕し、刑法第505(b)条に抵触したとして起訴した。メイッティーラ警察は9月16日、Than Toe Aung 氏とSann Linn 氏を逮捕。 2人は裁判を待つ間、マンダレー地方域のメイッティーラ刑務所に収監されている。もう1人の学生、Lin Thurako氏は同じ容疑でサガイン州モンユワ刑務所に収監され、裁判を待っている。

刑法第505(b)条は、「公衆に恐怖や警戒心を抱かせる意図をもつか、それらを抱かせうる言説や流言、報道を行い、公表し、あるいは流通させる」ことを禁ずる過度に広範な法律で、政府に批判的な言論を弾圧するために長く適用されてきた。同法は、暴力の扇動や重大な公共の混乱を目的とした言論のみを対象にするよう改正されなければならず、かつ国際基準に確実に準拠したものになるよう文言も明確に定義すべきだ。

9月9日に警察は、ラカイン州シットウェ県でラカイン系学生のToe Toe Aung氏、Kyang Naing Htay氏、Oo Than Naing氏を、抗議デモを主催し、政府と軍に批判的なプラカードを掲げたとして逮捕。翌10日、新型コロナウィルス感染症規制が施行されている期間に抗議デモを行ったとして、自然災害管理法に基づき訴追した。訴追は同月22日に取り下げられたが、当局は代わりに3氏が平和的なデモ活動および集会法第19条に基づく訴追に直面するだろうと述べている。

ラクディール法律顧問は、「平和的な学生活動家に対する警察の深夜の踏み込み捜査は人権侵害的かつ不必要であり、威嚇行為以外の何ものでもない」と指摘する。「ミャンマー政府は、平和的な集会を組織、またはそれに参加したことに対する刑事罰を廃止し、これらの学生のような平和的批判者に対する嫌がらせに終止符を打つべきだ。」

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