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コロンビア:民兵組織の後継グループが人権蹂躙

政府は、民間人を保護し、グループ構成員とその共犯者の訴追を

(ボゴダ)-コロンビアでの民兵組織の動員解除は不完全に終わった。その結果、国中に武装グループが出現し、人権蹂躙を続けている。コロンビア政府は、この脅威に効果的に対応する必要がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

122ページの報告書「民兵組織を引き継ぐ武装グループ:コロンビアにおける暴力の新顔」は、コロンビア統一自衛軍(United Self-Defense Forces of Colombia:AUC)として知られていた民兵組織連合の後継グループによる広範囲にわたる重大な人権侵害を取りまとめている。後継グループは、虐殺・強制移住・レイプ・恐喝などを日常的に行い、支配地域のコミュニティーを恐怖で覆っているほか、人権活動家・労働組合員・民兵の被害に対し司法救済を求める者、命令に従わない地域住民などを頻繁に標的にしている。報告書と同時に、この後継グループの標的とされたコロンビア人の写真や音声など、マルチメディアも発表される。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアメリカ局長ホセ・ミゲル・ビバンコは「このグループは、民兵と呼んでもいいし、ギャングと呼んでもいいし、それとも何か他の名前でもいい。なんと呼ぼうと、これらのグループによる今日のコロンビアの人権状況に対する悪影響は矮小化されるべきではない」と語る。「民兵と同様、これらの後継グループも、恐ろしい残虐行為を行っている。それを止めさせる必要がある。」

本報告書は、2年近い現地調査に基づいて作成された。本報告書は、こうした後継グループが相当数存在している4地域:チョコ(Chocó)州のメデジン(Medellín)とウラバ(Urabá)の両市、それにメタ(Meta)州とナリーニョ(Nariño)州の実態に焦点を当てるとともに、コロンビアの人権状況にこれらの後継グループが及ぼした悪影響について詳述している。

この後継グループたちのせいで、コロンビア社会で人権を享受することが困難になってきている。コロンビア警察の最も控えめな推定でさえ、その勢力は4000名を超えているとし、コロンビアにある32の省庁の内24に後継グループが存在していると断言している。グループは、盛んに新たなメンバーをリクルートし、指導者の一部を逮捕されても、指導部を速やかに代え活動範囲を拡大している。

2004年から(判明している限りの)2007年中まで、コロンビアでは、人口のうちに国内避難民が占める比率が上昇。後継グループの増大は、その傾向と一致している。人びとの難民化の大部分が、後継グループが活発に活動している地域で起きている。メデジンなどの幾つかの地域では、昨年、殺人事件発生率がほぼ2倍に上昇。グループの活動は暴力事件発生を劇的に増大させている。

本報告書は、以下に掲げるような、後継グループによる様々な人権侵害の例を取りまとめている。

● アンティオキア(Antioquia)で、ある人権活動家の女性が民兵の被害にあった女性宅で支援をしていたところ、自らをブラック・イーグルと呼ぶ後継グループの構成員が押し入り、両女性を強姦。その人権活動家に活動を止めるよう警告した。そのグループの脅迫は続き、結果的に彼女は町から避難せざるをえなくなった。

● メデジン近郊のパブロ・エスコバル(Pablo Escobar)出身の40名以上が、2008年末から2009年初頭にかけて、故郷から逃れざるをえなくなった。動員解除された民兵組織の元メンバーが一部を構成する、地元の武装グループによる虐殺と脅迫の結果である。

●南部国境地帯にあるナリーニョ州では、ナリーニョ小作農自衛軍(Peasant Self Defense Forces of Nariño)と名乗る後継グループが、海岸部にあるサティンガ(Satinga)の町の1つに乱入して若者2名を殺害し、もう1名を強制失踪させたため、サティンガの3つのコミュニティーの住民ほとんどすべてが難民化した。

後継グループの出現は予想できた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2003年から2006年の間に民兵組織を解体した際、コロンビア政府が、民兵連合の犯罪ネットワークを解体しなかったため、こうしたグループが出現した。政府による民兵組織の動員解除は不十分で、民兵組織が一部メンバーの活動を維持しつつ、動員解除される民兵を演ずる民間人を雇い入れるという偽装工作も許してしまった。本報告書は、たとえば、北部ブロック(North Block)の動員解除について詳述。コロンビア統一自衛軍(AUC)指導者ロドリゴ・トヴァル(Rodrigo Tovar:ジョージ40として知られている)の出した偽装命令に関する多くの証拠を示している。

政府当局と政府治安部隊が、後継グループの活動を黙認しているとの批判が存在しており、本報告書はこうした事態にも懸念を表明。検察官たちや警察幹部らは、そうした政府の姿勢が、自分たちの職務に対する障害になっている、と述べた。訪れた地域すべてで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、治安部隊が後継グループを黙認しているという話を繰り返し聞いている。

ナニーニョでは、例えば、ある男性が「ブラック・イーグルに警察から20mの所で尋問されてるんだ。・・・警察は当てに出来ないよ、だってあいつらブラック・イーグルの奴らと本当はつるんでいるんだ」と不満を漏らしていた。ウラバ(Urabá)では1人の元役人が、町の警察は後継グループと連携しているようで、「警察が[町の]入り口と出口を管理して・・・情報を共有しているのが・・・・明らかだよ」と語っていた。メタ(Meta)では、1人の役人が、「たくさんの苦情がくるよ。政府軍が、‘クチロス'(その地域の中心後継グループ)が来るぞ、と人びとを脅す、っていう苦情さ。・・・実際、軍がひきあげてクチロスがやって来る、ということもあったよ」と述べていた。

コロンビア政府は、民間人を危害から守り、人権侵害を予防するとともに、人権が侵害された場合には犯人たちの法的責任を追及する法的な義務を負っている。

しかし、コロンビア政府は、警察がこうしたグループと闘うことや、検察官が彼らを捜査すること、そして、そのために必要なリソースを確保することなどを実現してきていない。また、民間人住民の保護に主要な役割を果たすオンブズマン事務所の早期警報システムへの資金拠出を、コロンビア政府はしぶってきた。また、公的機関が、後継グループのせいで避難を余儀なくされたと訴え出た民間人への支援も拒否することも多い。しかも、政府は、後継グループの活動を政府関係者が容認したという疑惑について、政府内の共犯者を洗い出し、捜査し、処罰するための効果的措置も講じてきていない。

「ウリベ大統領政権は、こうした後継グループの出現に対し、重大性をしっかり認識して問題解決にあたってこなかった」と前出のビバンコは語った。「コロンビア政府は、後継グループに対峙するために一定の手段を講じてはいる。しかし、民間人を保護し、後継グループの犯罪ネットワークを捜査し、彼らの資産と共犯者を追及するために必要な、継続的かつ真剣な努力をしてはこなかった。」

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