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国連人権理事会:イエメン決議 貧弱

アカウンタビリティ実現に向けた専門家設置は前進

(ジュネーブ)-イエメンでは人権状況が急速に悪化している。それにもかかわらず、国連人権理事会の弱腰な対応は、イエメン国民を裏切るものであると、本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同理事会会期はイエメンに関する決議を採択して、今年9月30日に閉幕。しかしその決議は、近時の人権侵害に対する国際的調査を促進する内容になっていないうえに、進行中の人権侵害を現地で監視するプレゼンスを促進するものでもない。

この弱腰な決議は、イエメン側の支持を確保せんとする姿勢や、「合意なき」文言では多数票を獲得できないという懸念の産物である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのジュネーブ事務所ディレクター、ジュリエット・デ・リベロは、「イエメンでは会期の開会以降も、36人以上の抗議デモ参加者が殺害されているというのに、まだ理事会はより強力な措置を取ろうとしない」と述べた。「目下進行中の人権侵害を止める意思が全くないイエメンのような国々によって、人権理事会が行うべき職務の遂行を妨害されるなど、あってはならない。」

人権問題に関する国際調査および同国内に国連人権事務所設置を求める決議案が提出されたにもかかわらず、採択された決議では、国際監視なき「独自調査の実施」というイエメン側の表明に「注目(take note)」。イエメン政府と人権高等弁務官に「人権に関して対話を継続し、協力関係強化の枠組みを作る」よう要請するにとどまった。

イエメンは国連人権機関の早期派遣を滞りなく受け入れるべきであり、国連加盟国も、同国内の問題に有意義に対処できる国連人権事務所の設置を支持すべきだ。

イエメンでは2月に、アリ・アブドラ・サレハ大統領の33年にわたる支配に反対して、おおむね平和的な抗議デモが始まった。以来、治安部隊と武装した親政府派暴漢の攻撃で225名の死者が出ているのを、ヒューマン・ライツ・ウォッチは確認している。9月19日以降にも多数の人びとが殺害されており、状況はここ数週間で急速に悪化している。

前出のジュネーブ事務所ディレクター、デ・リベロは「世界中の陰惨な人権状況改善に着実な進展がみられた本年、イエメンに関連する人権理事会の行動は、危機に瀕した人びとの保護という観点において後退だ」と指摘。「同理事会は世界の人権保護と推進の使命を果たすべく、イエメンやその他諸問題への関与を強める必要がある。」

今会期における前向きの進展としては、真実・正義・補償問題についての国連専門家の創設が挙げられる。この専門家は、2012年3月の次会期で指名される予定。人権侵害に満ちた暗黒時代から復興の過程にある社会に最も必要とされる策を促進するため、各国の真実と和解委員会や司法制度、紛争後機構などを調査することになっている。

前出のデ・リベロは、「真実・正義・補償に特化した新たな専門家の設立は、重大な人権侵害の犠牲者とその家族にとっての重要な勝利といえる」と述べる。「加えて、アカウンタビリティ(責任追及・真実解明)がいかに重要かというメッセージを送ることになる。犯罪者が、実際に罪を犯す前によくよく考えることにも繋がる。」

なお、スーダンと新たに独立した南スーダンの人権状況に対する対応に関しては、功罪半ばの結果となっている。

人権理事会はスーダン担当国連専門家の任務を1年間更新した。しかしながら、スーダン国境地帯の南コルドファン州と青ナイル州で起きている、人権危機・人道危機に対する有意義な対策を打ち出すには至らなかった。政府と反政府武装勢力間の武力紛争は6月5日に南コルドファン州で勃発し、9月2日には青ナイル州に拡大。その結果、超法規的殺人、家屋や所有物の広範な破壊、大規模な何十万もの一般市民の難民化をもたらした無差別爆撃など、重大な人権侵害が起きている。

7月9日に独立を勝ちとった南スーダンに関する決議で、人権理事会は人権高等弁務官に対して、2012年6月の会期で同国の人権状況に関する報告書を提出するよう求めた。

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