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(ベイルート)イラン政府は、女性の権利の擁護を理由に不当に拘禁されている女性活動家3人を即時無条件で釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際女性デーである本日述べた。2014年3月2日、3人のうち1人に7年の刑が下された。残り2人はすでに刑期に服している。

この3人は、テヘランのエヴィーン刑務所の女性政治囚区画に拘禁中の少なくとも14人の女性に含まれている。イラン政府はまた、同国の法制度に条文として組み込まれた女性差別にも対処すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「国際女性デーは、イランで投獄中の勇気ある女性たちに光を当てるべき機会だ。女性たちは国民の権利を訴えたり、差別的な国内法の全面見直しを求めただけで拘禁されている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。「こうした女性活動家の拘禁は、イラン政府が自国民から最も基本的な権利を奪っていることを浮き彫りにするものだ。」

3月2日、革命裁判所は、学生の権利擁護に取り組むマリヤム・シャフィープール氏に対し、国家の治安を乱す行為で有罪とし、7年の刑を宣告した。

女性と学生の権利擁護に取り組むバハーレ・ヘダーヤト氏は、2010年5月に非暴力活動に関係して10年の刑を宣告された。2009年に氏が逮捕されて以降、夫はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、妻には婦人科系の重い疾患があるが、当局から刑務所外治療の許可が出ないと述べた。刑務所内で婦人科の医療サービスが受けられず、刑務所外で治療を受けることも認めないのは、女性差別にあたりかねないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

3人目の活動家はハキーメイェ・ショクリー氏だ。政治囚、および2009年大統領選挙後の暴力事件で殺害されたデモ参加者を支援する非暴力活動で3年の刑に服している。

シャフィープール氏(27)は、2013年7月27日にエヴィーン刑務所検察官事務所に出頭を命じられ、逮捕された。氏は、政治活動を理由に高等教育から排除された大学生の権利を擁護し、2009年の大統領選候補で自宅軟禁中のメフディー・キャッルービー氏ら政治囚の釈放を求めたとして、すでに数年の刑に服している。

家族に近い筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、シャフィープール氏は裁判前に7カ月間未決拘禁されており、うち2カ月は独居拘禁状態で、弁護士と接触できなかったと述べた。別の消息筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、氏は未決拘禁中に取調官から心理的、身体的暴行(蹴るなど)を受けたと述べた。

家族に近い筋はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、テヘラン革命裁判所第28支部はシャフィープール氏を「反体制プロパガンダ活動」「国家の安全を脅かす集会と共謀行為」「非合法組織への加盟」で有罪としたと述べた。3つめの「非合法組織」とは、この消息筋によれば、教育機会を奪われた大学生の権利擁護のための組織を指す。この消息筋によれば、これら「犯罪」を示すとして検察官事務所が提示した証拠には、氏のFacebookのウォールに投稿された政治囚の状況に関する情報のほか、氏が行った非暴力活動、氏も署名した高等教育の機会を奪われた学生への支援声明などがあった。シャフィープール氏への判決には、釈放後2年間のFacebookほかソーシャルメディアの利用禁止措置がついた。

2010年に、ガズヴィーン市北西にあるエマーム・ホメイニー国際大学は、人権活動を理由にシャフィープール氏の学業継続を認めない決定を行った。対象となった活動は、政治囚家族への訪問と、キャッルービー氏の大統領選挙への応援活動だった。シャフィープール氏は、判決と量刑について20日以内に異議を申し立てることができる。

シャフィープールとショクリー両氏は「ラーレ公園の母たち」に参加していた。この団体は2009年6月に、2009年6月12日の大統領選結果への抗議デモに対し、政府が行った暴力的弾圧で亡くなった人びとの母親が結成した。「母たち」は政治囚とその家族にも連帯を表明している。当局は、以前は「嘆きの母」という名前だったこの団体を繰り返し標的にし、メンバーを逮捕し、テヘランのラーレ公園をはじめ公共の場での集会を禁じた。

テヘラン革命裁判所はショクリー氏を「反体制プロパガンダ」「国家の安全を脅かす行為」で2012年4月に有罪判決を下した。人権活動家筋は、氏が「母たち」の活動に関わっていたことが理由だとする。治安部隊はショクリー氏ら同団体のメンバー複数を2010年12月5日に逮捕した。メンバーはテヘランの墓地に集まり、2009年大統領選挙後の暴力事件で治安部隊に殺害されたあるデモ参加者を追悼しているところだった。

ヘダーヤト氏(32)は団結強化事務所の女性委員会の第一書記。同事務所は国内有数の学生組織だが、2009年から活動を禁じられている。氏は中央委員に選出された初めてかつ唯一の女性である。当局はヘダーヤト氏を2009年12月30日に逮捕し、その後治安関係の複数の容疑で起訴した。容疑は「反体制プロパガンダ」「公序紊乱」「非合法集会への参加」「最高指導者への侮辱」「大統領への侮辱」など。控訴審では2010年7月に一審判決を維持する決定を下した。

ヘダーヤト氏の妻のアミン・アフマディヤーン氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ヘダーヤト氏は団結発展事務所中央委員としての演説と共同声明を理由に8年の刑に服していると述べた。その内容は、2009年大統領選挙での反体制活動家と学生に対する政府の弾圧を批判するものだった。アフマディヤーン氏によると、ヘダーヤト氏は2006年に参加したデモとの関係で、執行停止になっていた2年の刑にも追加で服しているという。これは女性差別的な法令の撤廃を目指す草の根キャンペーン「百万人署名」のデモだった。

氏はまた、ヘダーヤト氏は婦人科系の慢性的な合併症を患っており、直ちに医師の診察が必要だが、司法権と刑務所当局は、治療目的での仮出獄を妥当な日数だけ認めてないと話している。

イラン司法権は、ヘダーヤト氏ら政治囚を、最近改正されたイラン刑法に従って釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。刑法134条によれば、複数の刑で有罪となった人物は、各容疑に基づく刑期を加算するのではなく、最も重い容疑に適用された刑期だけに服すればよい。刑法134条に基づけば、司法権はヘダーヤト氏を刑期が半分経過した時点で釈放できる。

2005年以来、とくに2009年大統領選挙後に、イランは身柄拘束をはじめ、活動家への弾圧を強化した。学生の権利を擁護する人びとやジェンダーに基づく差別的法令に反対する人びともその対象となっている。イラン女性は、婚姻、離婚、相続、親権といった私法上の地位にかかわる事項について、差別に直面している。女性が結婚するときには、年齢にかかわらず男性の保護者の許可が必要であり、外国人の配偶者や二人の子どもに自分と同じイラン国籍を与えることはできない。

2013年8月1日、ヒューマン・ライツ・ウォッチは就任間近のハサン・ロウハニ大統領に書簡を送り、重要分野(政治囚釈放、大学での学問の自由の拡大、女性の権利の尊重など)での改革に向けた具体的な措置をとるよう求めた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは同氏に対し、学生の活動を不当に監視し、基本的権利の行使だけを理由に停学や退学の処分を行う規律委員会を廃止し、団結発展事務所などの団体の再開を許可するよう強く求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた同氏に対し、同国での男女平等を目指す取り組みを行うよう求めた。この中で、たしかに「大統領には、婚姻、相続、親権に関する差別的な身分法を直接変更する権限については限られたものしか備わっていない[…]。しかしそれでも、こうした法令を改正あるいは廃止する取り組み」だけでなく、前出の百万人署名のような団体についても「支援を行うべきである」と述べた。

11月26日、ロウハニ大統領の公式ウェブサイトは市民権憲章草案を発表し、パブリック・コメントの募集を行った。ヒューマン・ライツ・ウォッチとイラン人権国際キャンペーンは共同書簡のなかで、草案に示された条項の多くが、女性の権利を扱った部分も含めて、人権を十分には保護していないか、国際法に定められたイランの法的義務に背くものであると指摘した。問題視されるものとしては、「国家の安全」「イスラームの原則」といった主観的と思われる基準によって課される人権の制限がある。

「シャフィープール氏、ヘダーヤト氏、ショクリー氏ら人権活動家を出獄させ、イランを国際法が定める人権擁護義務に従わせる一義的な責任は、司法権にある」と、前出のウィットソン局長は指摘した。「しかしロウハニ政権もまた、これら人権活動家の釈放を求め、治安部隊と公安部隊に活動家に嫌がらせを行い、弾圧の標的にすることを止めるよう圧力をかける上で、決定的な役割を果たすことが可能なのだ。」

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