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この1年間のイエメンにおける紛争は想像を絶するものであるにもかかわらず、これまで、ほとんど注目されてきませんでした。

国連人権高等弁務官事務所によると、2015年3月以来、少なくとも2,000人の一般市民が犠牲になりました。原因の大半は、サウジアラビア主導の連合軍が行った空爆です。ヒューマン・ライツ・ウォッチは現地調査を実施し、国際人道法(武力紛争法)の重大な違反行為を数多く発見。これらには紛争の全当事者が関与しており、多くが戦争犯罪に該当するものです。

連合軍は空爆を繰り返し、軍事目標が存在する証拠のない場所でも一般市民が犠牲になっています。そして、国際条約で禁じられたクラスター爆弾も使用しているのです。いっぽうフーシ派の部隊も、イエメン国内やサウジアラビア領土の人口密集地域にロケット弾を無差別で発射。アデン、アビヤン、ラヘジ周辺には、これも国際条約で禁じられた対人地雷を埋設しました。そしてアデンの南部勢力部隊は、疑いをかけたフーシ派の人びとを処刑しています。

今日、イエメンでの戦争犯罪疑惑および国際人道法違反をめぐる国連人権高等弁務官の報告書を協議するため、国連人権理事会が会合を開きます。報告書は、紛争の全当事者による戦争犯罪疑惑、ならびに深刻な死傷者を出している明らかな国際人道法違反を、国際的な、独立かつ公平なかたちで調査することを勧告しています。

人権理事会が高等弁務官事務所に報告書の作成を求めたのは1年ほど前のこと。人権侵害がますます拡大するなか、これら勧告を迅速に承認することは非常に重要です。

武力紛争の当事国は国際人道法のもと、戦争犯罪疑惑を捜査し、加害者に法の裁きを下す義務を負っています。しかし、これまで連合軍はこれを遂行してきませんでした。ゆえに人権理事会はモロッコやカタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などの連合軍参加国に、武力紛争法違反の責任が問われることになる、と伝えなければなりません。

イエメン決議案の起草を主導するオランダは、紛争の全当事者が関与している人権侵害をめぐり、独立した国際調査委員会の設置を推進すべきです。そしてサウジ主導の連合軍の強力な後ろ盾である米国と英国は調査を支援すべきであり、さもなくば、連合軍による今後の侵害行為の共犯者となってしまいかねません。

イエメンにおける戦争犯罪疑惑の捜査、という国際的な義務に紛争の当事国が従っていない現状を踏まえ、国連人権理事会は今後、断固とした行動を取る必要があります。イエメン市民の安全がそれにかかっているのです。

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