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米国:保護観察・仮釈放が原因で大量収監クライシス

厄介なルールと厳しいペナルティで長期化する刑期

(ニューヨーク)—保護観察および仮釈放処は人びとが刑務所への収監の代わりに社会復帰する方法として推奨されているにもかかわらず、米国ではこれらの処分が原因で、刑務所が服役囚であふれかえっている、とヒューマン・ライツ・ウォッチおよびアメリカ自由人権協会(ACLU)は、本日発表の共同報告書内で述べた。

報告書「処分取り消し:保護観察・仮釈放制度により、服役囚であふれかえる米国の刑務所」(全225ページ)は、保護観察・仮釈放処分のため、非常に多くの人びと(圧倒的に黒人など有色人種が多い)が刑務所に再び収監されていること、そして、ほとんどの場合こうした人びとは社会復帰に必要な公共サービスやリソースを受けとれていなかったことを明らかにした。本報告書が調査した各州とも、保護観察・仮釈放のルールに違反したり、軽犯罪で再収監されたケースが多く、公正な裁判を受ける権利が適切に保障されていない手続きのすえ、犯罪に見合わない重い処罰を受けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチおよびACLUのAryeh Neierフェローで、本報告書を執筆したアリソン・フランケルは、「保護観察・仮釈放は寛大な処分とみなされているが、私たちが調査した各州では、違法薬物を使用する、新住所の報告義務を怠る、治安びん乱行為といった公序良俗違反を犯すといったことだけで、再収監につながるケースが数多くあった」と指摘する。「根底にあるニーズへの実質的な対応支援もないまま、負担が非常に重い義務を果たせなかったために再収監されれば、その人たちの人生計画は混沌としてしまう。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチおよびACLUは、この問題が特に深刻であるペンシルバニア、ウィスコンシン、およびジョージア各州で、保護観察または仮釈放違反で収監されたことのある47人を含む164人に聞き取り調査を行った。また、服役した人の家族、政府関係者、弁護士、政策提言者、専門家にも話を聞き、各州および米司法省司法統計局のデータを分析した。

調査対象者の1人、在ジョージア州の黒人男性ウィリー・ホワイト氏は、販売目的のマリファナ所持の容疑に不服申立をしていた6カ月間、刑務所(ジェイル)に収監されていたが、子どもたちのいる自宅に戻るため罪を認め、保護観察10年の刑を言い渡された。が、支払いのミスと違法薬物の所持・使用をそれぞれ1回犯し、すぐに刑務所に戻されることになった。「[保護観察で]所持金はすべて消え、小さな間違いを犯したことで投獄され続けることになってしまいました。これは本当に大変でした。」

また、在ペンシルバニア州の黒人女性は、主に万引きと違法薬物関連犯罪で、保護観察と刑務所収監の間を行ったり来たりした。彼女はその原因について、薬物依存を挙げる。「更生プロブラムを希望したんです。でも、[保護観察処分は]私が助けを求めていることなどお構いないしで、与えられたのは時間だけでした。」

過去50年の間に、米国における保護観察および仮釈放処分は、刑務所人口とともに急増した。 2016年の時点で450万人、服役囚の55人に1人が、その多くは数年にわたって保護観察下にある。多くの場合、払いたくても払えない罰金や手数料など、数多くの広範かつあい昧かつ抑圧的な条件に従わなくてはならない。具体的には、遠く離れた場所で頻繁にあるミーティングへ出席する、住所が変わるたびに報告する(住居確保が容易でない状態の場合さえも含む)、「評判の悪い」人びとと交流しない、などがある。

構造的人種差別とは、黒人およびヒスパニック系の人びとが、保護観察条件に従うのに必要なリソースを持ち合わせている可能性は低く、逮捕されたり、保護観察条件に違反していると判明する可能性は高いことを意味する。

本報告書に含まれる調査結果:

  • 保護観察および仮釈放処分は、刑務所収監の回避ではなく、実際には服役囚数を増やすことにつながっている。州政府評議会のデータによると、2017年、米国全州の刑務所の服役囚のうち45%が保護観察または仮釈放違反で収監されていた。今回の調査対象州のデータでも同様にその割合が高いことがわかっている。ペンシルベニア州の全刑務所の服役囚の半分が、仮釈放違反を犯していた。この20年間、ウィスコンシン州の刑務所では、保護観察違反による収監が通常犯罪の約2倍にのぼる。またジョージア州では、2019年の5カ月間で、9つの郡の刑務所に服役する23〜43%が保護観察または仮釈放処分の違反に関与していた。
  • ペンシルベニア州、ウィスコンシン州、ジョージア州では、収監につながる違反行為は違法薬物の使用、住所変更の未報告、プログラム義務の不遵守が一般的。違反ではなく新たな犯罪による再収監の場合は、治安びん乱行為、軽犯罪、違法薬物の所持、万引きなどがある。
  • 保護観察とその執行をめぐっては人種差がはっきりしている。Pew Charitable Trustsは2016年に、全米で白人の81人に1人、黒人の23人に1人が保護観察下にあると報告。本報告書の調査でも、ウィスコンシン州では違反行為があったとして処罰された黒人の割合が州内の人種別人口比の4倍になることが明らかになった。ネイティブアメリカンの場合は人口比の7倍にものぼる。全米で、黒人は同様の条件下にある白人よりも保護観察処分を取り消される可能性がかなり高いことが、複数の調査で証明されている。
  • 本報告書の調査対象となった多くの管轄区域では、ルール違反したとされる人びとは訴追内容に不服を申立てるための審問を数カ月間も収監されたまま待たねばならず、それは管轄区域から逃亡する可能性の証拠が全くなくても同じだ。多くは、適切なメンタルヘルス医療サービスや薬物依存の治療も受けられないまま過密かつ不衛生な刑務所に収監され、現在ではさらに新型コロナウィルス感染症への脅威にも直面している。
  • 保護観察処分違反が判明した場合、調査対象州の人びとは、公正な裁判を受ける権利が保障されていない手続きを通じて、追加の刑期など、罪に見合わない重い処罰の対象になっていることがわかった。
  • 根本的にルール違反はしばしば貧困から生じる。薬物依存、不安定な住宅事情、メンタルヘルス状態、人種的に偏った警察の対応といった困難に、関係当局が対応しないできることが問題だ。

フランケルAryeh Neierフェローは、「保護観察および仮釈放処分は別の法制度に基づくため、推定無罪、迅速な勾留審問、合理的な疑いを超える立証責任といった基本的権利は消え失せてしまう」と指摘する。 「これが原因となり、出所したいなら罪を認めるしかないという非常に大きなプレッシャーが生まれる。」

これら保護観察制度の多くの側面は、罪に釣り合わない重い刑罰、人種差別、恣意的拘禁などを禁じた米国および国際人権法に抵触している。処分の取消し制度もまた、多くの側面で公正な裁判を受ける権利をめぐり、重大な懸念を呼び起こす。また、生活・住居・食糧・保健など、基本的なニーズの適切な基準を保つ権利を保障する国際法にも矛盾している。

近年、多くの州が保護観察をめぐる負担を軽減して、違反による再収監を抑えたうえ、雇用や教育、医療のための地域密着型リソースに財源を投じる改革に着手している。しかし、こうした変化はあっても、クリアな治安の改善や社会復帰の促進にはつながらない抑圧的な保護観察制度自体はそのままだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチとACLUは本報告書で、連邦政府、州政府、地方自治体に対し、保護観察/再収監から脱却し、薬物依存およびメンタルヘルスのケアのために、雇用・住居・自主的な治療へ投資するよう提言している。

前出のフランケルは、「コミュニティに投資することで、政府は保護観察と再収監の悪循環を打ち破り、リソースを提供することで、助けを必要としている人びとを救うことができる」と指摘した。

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