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タイ:非常事態宣言は取り締まりの口実

訴追を取り下げ、民主活動家を釈放せよ

Riot police march towards pro-democracy protesters near Government House in Bangkok, Thailand, October 15, 2020. © 2020 AP Photo/Gemunu Amarasinghe

(バンコク)―タイ政府による首都バンコクの非常事態宣言は、平和的なデモを取り締まる口実だ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。 2020年10月15日の非常事態宣言発令以降、バンコクにある首相府の前で、デモ主導者数名を含む少なくとも22人の活動家が逮捕されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「非常事態宣言はタイ政府に基本的自由を抑圧する無限の権限を与え、政府関係者の説明責任が全く問われなくなる」と指摘する。「タイ政府当局は、言論の自由をはじめとする市民的自由を侵害する厳格な法で平和的な抗議活動を弾圧すべきではない。」

10月15日午前4時、プラユット・チャンオチャ首相がバンコクに非常事態宣言を発令。 激化する民主化推進グループの抗議活動は法と憲法に觝触するものであり、かつ混乱を引き起こしたり、新型コロナウイルス感染症抑制措置の効果を弱め、国家安全保障および公共の安全を害するものと主張した。政府はまた、デモ参加者が10月14日に首相府付近で女王の車列を妨害したと非難した。

プラユット首相の発表直後、警棒と盾で武装した数千人規模の機動隊が、首相府周辺に集結していたデモ参加者を強制的に排除。警察はデモ主導者のArnon Nampha氏、Parit Chiwarak氏、Prasiddhi Grudharochana氏、PanusayaSithijirawattanakul氏を含む少なくとも22人を逮捕した。

厳格な「非常事態における行政関連緊急指令」は、個人を具体的な容疑なしに逮捕し、非公式の拘禁場所に身柄を拘束できる広範な権限を当局に与えており、同法のもとで職務を遂行する関係当局者は刑事免責を享受している。また、同法は弁護人との接見や家族の面会する権利の保障も義務づけていない。

非常事態宣言下のタイでは、政府当局が表現および報道の自由を規制するために広範な検閲が可能だ。BBCワールドサービスなどによるタイ関連の国際報道は、タイの主要ケーブルテレビ局TrueVisionsでは遮断されて視聴することができない。当局はまた、政府批判で有名なテレビ局VoiceTVの放送を遮断するよう、衛星放送サービス事業者に圧力をかけている。タイ議会における政治問題についての討議も放送が一時停止されたままだ。バンコクでは5人以上の集会が禁止された。

タイ政府は、7月18日に始まり後に全国に広がった若者主導の民主派抗議活動への対抗姿勢を示してきた。デモ参加者は政府の退陣、新憲法の起草、表現の自由を行使する市民へ嫌がらせをやめるよう求めている。国王の権力を制限する王室改革の要求が含まれた抗議活動も一部あった。タイの人権弁護士たちによると、バンコクやその他の県で平和的なデモを行ったために、少なくとも85人が違法集会の容疑で訴追に直面している。一部のデモリーダーたちは、君主制の改革をめぐり要求を行ったとして、最高7年の刑を伴う扇動罪で訴追された。

アダムズ局長は、「タイ政府は自ら人権危機を引き起こした」と述べる。「平和的なデモや政治改革要求の犯罪化は、権威主義的支配の証だ。」

1996年にタイが批准した「市民的および政治的権利に関する国際規約」などに示される国際人権法は、表現および平和的集会の自由を保障している。しかしタイ政府当局は、人権、政治改革、そして社会における君主制の役割についての検閲を日常的に行い、公の場での議論を圧迫してきた。2014年の軍事クーデター以来、タイ政府は、扇動罪、コンピューター関連犯罪、(君主制を侮辱する)不敬罪といった重大な容疑で、平和的に意見を表明した数百人もの活動家や反体制派を訴追している。

加えて、政府当局はこの5カ月間以上、新型コロナウィルス感染症パンデミックを制御するための非常事態宣言措置を口実に反政府集会を禁じ、民主活動家への嫌がらせを行ってきた。

アダムズ局長は、「タイ政府は、権利を尊重する民主主義の構築を目指す改革を要求しただけの平和的なデモ参加者を長期刑をちらつかせて威嚇している」と指摘する。「各国政府および国連はこの政治的弾圧の波をおおやけに非難し、民主活動家の即時かつ無条件の釈放を強く求めるべきだ。」

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