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LGBT Rainbow Flag  © 2008 Ludovic Berton (Wikimedia Commons)

(東京)―菅義偉首相は、性的指向・性自認に基づく差別を禁止する法律の成立を目指すと約束すべきだと、LGBT法連合会(J-ALL)、アスリート・アライ、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。人権とLGBT等(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー等)にかかわる内外116団体が、東京五輪大会の開始予定の半年前となる2021年1月25日、こうした法律の制定を要請する書簡を菅首相宛に送った。

東京は2020年夏季五輪のホストだが、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の感染拡大を受けて、国際オリンピック委員会と日本政府は1年延期を決定している。東京2020大会は「多様性と調和」と「未来への継承」などを基本コンセプトとする。その実現に向け、日本政府には、国際基準を満たす内容の、LGBT等の人びとやアスリートを差別から守る法を制定することが求められる。これらの団体は、性的指向・性自認に基づく差別を禁止する法律の制定を求めて、日本語英語で「#EqualityActJapan」キャンペーンを展開中だ。

「アスリートを含む日本のLGBT等の人びとも、法の下で平等に守られるべきだ。しかし現在、性自認や性的指向をオープンにしている現役アスリートとして私たちが把握しているのはたった一人だ。多くのアスリートは、恐怖やスティグマゆえにカミングアウトできていない」と、日本国内のLGBT関連80団体の連合体であるLGBT法連合会(J-ALL)の五十嵐ゆり理事は指摘する。「だれもがオープンにそして安全に暮らせる社会を作るべきだ。そんな社会に向けて、五輪大会は、日本がLGBT差別禁止法を上程・成立させる絶好の機会といえる。」

オリンピック憲章は「オリンピズムの根本原則」のひとつとして、性的指向を含む「いかなる種類の差別」も明示的に禁じている。また日本は、市民的及び政治的権利に関する国際規約及び経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約など、差別から人びとを守る政府の義務を定めた主要な人権諸条約を批准している国だ。

「これまでの歴史を見てもわかるように、五輪大会には、アスリートやファンによる信念の発露を後押しする力がある。トミー・スミスとジョン・カルロスが1968年メキシコ夏季五輪で行った人種差別に反対する行為(ブラックパワー・サリュート)から、2014年ソチ冬季五輪でのLGBT等アスリートの権利のための憲章6条キャンペーンに至る歴史だ」と、アスリート・アライ創設者で代表のハドソン・テイラーは述べた。「スポーツは私たちに団結が力だと教えている。そして今こそ、世界のスポーツ・コミュニテイが日本のLGBT等コミュニティと連携すべき時だ。」

日本のLGBT等団体はこの6年間、LGBT等の人びとの権利を保護する法案の成立を目指す活動に取り組んできた。そしてその成果は日本社会の急激な変化に現れている。LGBT等の平等を支持する国民が近年急増しているのだ。昨年11月に報告された全国意識調査では「(性的マイノリティに関して)いじめや差別を禁止する法律や条例の制定」に「賛成か、やや賛成」が約88%を占めた。

日本政府はまだ、LGBT等の人びとを性的指向・性自認に基づく差別から守る国レベルの法律を導入していない。しかし東京都は2018年10月、オリンピック憲章に沿って、LGBT等の人びとへの差別を禁止する条例(「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」)を制定した。この「五輪」条例は、五輪大会を契機に行われた人権に関する検討協議の直接の成果であり、世論の支持も高い。しかし差別が禁止されている地域とされていない地域の間で国内の地域格差がある状況であり、国レベルでの対応の必要性が明らかだと、これら団体は指摘する。

「今年は全世界が日本に注目する」と、オールアウトのマット・ビアード代表は述べる。「このような困難な時代だからこそ、五輪大会は、素晴らしい多様性をもつ人類への歓迎すべき、また大いに必要な祭典となるだろう。LGBT等の人びとを守る法律を導入すれば、日本政府は、寛容と尊重の促進という五輪精神を真の意味で支持していると証明できる。」

日本政府は、性的指向および性自認に基づく差別と暴力の廃絶を目指す2011年と2014年の国連人権理事会決議に賛成するなど、近年国連でリーダーシップを示しつつある。しかし、日本のLGBT等の人びとは国内で厳しい社会的圧力に依然さらされており、国内のそれ以外の人びとと比較すると法的保護が弱い。

「アスリートを含むLGBT等の人びとを守る画期的な法律を成立させれば、日本はLGBT等の権利における世界のリーダー国に仲間入りでいる。そして、この法律は、この五輪大会が日本社会に残す恒久的なレガシーとなろう」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの土井香苗 日本代表は述べる。

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