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国連安保理:ミャンマーに対して国際的な武器禁輸措置をとるべき

世界中の200以上の団体が国連による制裁決議を求める

A police officer stands in front of anti-coup protesters in Yangon, Myanmar, February 19, 2021. © 2021 AP Photo

(ニューヨーク)国連安全保障理事会はミャンマーに対して直ちに国際的な武器禁輸措置をとるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチなど世界200以上の非政府団体が安保理理事国に声明で訴えた。国連安保理は、2021年2月1日のクーデターと軍事支配に抗議する人びとの人権侵害を止めるよう迅速に軍事政権に圧力をかけるべきである。

「国連安保理が軍事政権への武器禁輸を協議さえしないことは、安保理がミャンマーの人びとに対して負う責任の著しい放棄である」とヒューマン・ライツ・ウォッチの国連局長、ルイス・シャーボノーは述べた。「ミャンマー国軍が平和的な抗議デモを暴力で弾圧することに対し、安保理は時折懸念を表明するだけであり、これは外交としては見て見ぬふりをしてその場を去るのと同じである。」

声明を出した諸団体は、安保理でミャンマー関連文書の作成を担当する英国が、武器禁輸を承認する決議案についての公開協議を直ちに始めるべきだと述べた。英国はこれまでそのような動きを躊躇しており、始めから中国やロシアなどが反対する可能性のある実質的な措置を含む決議よりも、全理事国が一致して支持できる声明を優先させてきた。

「現状ではいかなる政府もミャンマー国軍に一発の銃弾さえも売るべきではない」と諸団体は声明で述べた。「ミャンマーへの国際的武器禁輸は、悪化する国軍の暴力に対して安保理がとるべき最低限の必要措置である。ミャンマーの治安部隊に提供される武器や物資は、治安部隊が国際人権法や人道法に反する虐待行為をするために使われる可能性が高い。」

ミャンマーの国軍は2020年11月の選挙の結果を無効とし、でっち上げの「非常事態」を宣言した。クーデター以降、治安部隊は760人以上を殺害し、ジャーナリスト、医療関係者、教師、学生など3600人以上を恣意的に拘束するなど、国際人権法に違反する行為を行っている。また、数百人が強制失踪となっている可能性がある。

多くの各国政府や欧州連合(EU)はタッマドーとして知られるミャンマー国軍の高官や国軍が支配する企業に制裁を科しているが、安保理はクーデター以降、3本の声明を出したにすぎない。それらの声明で安保理は、抗議者に対する過度の武力行使の停止と、ウィンミン前大統領やアウンサンスーチー国家顧問ほか2020年11月8日の選挙で選ばれた人を含む政治囚の解放を求めた。

今回の武器禁輸を求める訴えは、2月24日に137の非政府団体が軍事政権に流れる武器を止めるよう迅速な行動を安保理に求めた声明の内容を拡張し、繰り返したものである。

「声明を発表するだけの時期は過ぎた」と諸団体は述べた。「安保理はミャンマーに関するコンセンサスのレベルを引き上げ、直ちに実質的な行動をとることに合意するべきである。武器禁輸措置はミャンマーの人びとをこれ以上の残虐行為から守り、国際法を犯しても罪に問われていない状態を終わらせるための世界的な取り組みの目玉となるだろう」

諸団体はまた、4月24日に行われた東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議が「ミャンマーの人びとを守るためにより力強い行動をとる」といった結果に至らなかったことに失望したと述べた。ミャンマーの軍事政権は暴力を止めるよう求めるASEANの呼びかけを無視している。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は2月、「ミャンマーに必要な圧力をかけるため、鍵となるすべてのアクターや国際社会を動かし、このクーデターが失敗に終わるようできることをすべて行う」と約束した。ミャンマーに関する国連特別報告者のトム・アンドリューズは武器禁輸や制裁の実施を繰り返し呼びかけてきた。国連事務総長特使のクリスティーヌ・シュレーナー・ブルゲナーも対象限定型制裁への協力を呼びかけた。

制裁決議を協議しようとしない安保理は、行動を求める世界各地からの呼びかけを集団で無視していることになる。安保理はこのほかに対象限定型制裁、世界的な渡航禁止措置、軍政と国軍所有の複合企業の幹部の資産凍結を行うべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べてきた。

軍政を率いるミン・アウン・フライン上級大将ほか数人の国軍高官は、ラカイン、カチン、シャン、チン各州で国軍が犯した人道に対する罪と戦争犯罪への関与を問われている。安保理が行動するまでは、国連の各加盟国はそれぞれの国や地域ごとにミャンマーへの武器や物資の販売その他の譲渡を止める措置を続け、事実上の国際的武器禁輸を実現させるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

各国政府はまた、ミャンマーの人びとの人権を保護したいと考える安保理理事国に対して、常任理事国のロシアと中国からの抵抗についての懸念を脇に置き、理事国が協議し投票できる決議案を出すよう求めるべきである。安保理決議は賛成が9票あり、5つの常任理事国が拒否権を行使しなければ採択される。

「安保理はミャンマーの人権状況について何もしてこなかった残念な過去があり、国軍が2017年にロヒンギャに対して民族浄化作戦を行ったときにもほとんど何も言わなかった」とシャーボノーは述べた。「安保理は中国とロシアのはったりに動じずに制裁決議を採決にかけるべきである。ロシアと中国がジェノサイドと人道に対する罪にすでに問われているミャンマー軍の側につくのなら、そのような妨害行為は高い政治的代償を払うことになるだろう」

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